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「新作にしてすでに名作」評された小説。
映画にもなったので、名前だけは知っていましたが、読みすすめる途中ですでに、その評価が決して過大なものではなかったことに気がついていました。 これはある架空の高校の、全校生徒が夜を徹してあるくという「歩行祭」の一夜を丁寧に綴ったお話です。 たった一晩ですが、身体と精神の限界の中で生まれた濃密な時間。その年齢だから「見え」て「感じられ」たかけがえのない時間。それらを丁寧に描写しており、大きな事件も、恋も、死もなにもないのに、心に深く残る。そんな不思議な力を持っていました。 私は、物語の核心ではないですが、主人公の友人たちへの気持ちや、彼女らを取り巻く環境や人間関係に共感し、自分の高校時代を思い出しました。 勧めてくれた彼氏は(実際、彼が買ったものを借りたのですが)、「あなたの高校時代と重なる部分があるんじゃないの」と言っていました。 「真面目な子も、変わった子も、自然に受け入れられている環境」というのが、この物語の美しさや静謐さ、暖かさの根底にあるんじゃないか、というのは彼の意見。 確かに、私の通っていた高校の生徒たちは、個性が強く、たくましく、向上心の高く、優しく、いじめのようなものは3年間全くとっていいほど見られなかったのです。当然その中で勉強も運動もたいしてできなかった私は劣等感を抱くことはあったし、そういうプレッシャーはかなりきつかった。けれど、できる子もできない子も、不思議な子もすごい子も、どんな子も「そういうものだ」と自然に受け入れられていたんだと思います。だから私はそれほど深刻にはならないで済みました。親友を心から尊敬していたし、学校が好きだった。自分を嫌いになることはあまりなかった。それは、私が過去を理想化している部分もあるのかもしれないけれど、やっぱり「人生でいちばん幸せな時代だった」といえる気がします。 本の話からそれてしまいました。「歩行会」の一晩のきつさ、その中での友人同士のふれあい、心の葛藤、ゴール、それらはなんだか自分の3年間を凝縮しているような気さえしました。大切な感覚を呼び覚まされたような気持ち。 きっと、読む人にそれぞれの青春時代を想起させ、懐かしい、温かい気持ちにさせてくれる作品だと思います。 ▲
by suzumecco
| 2008-02-26 23:08
| book
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もうひとつの隠れ家
heavenly cage
愛犬「鈴」の部屋 カテゴリ
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